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【ストーリー】
聖暦1878年、海に浮かぶ連合王国のひとつ、メイズラント。産業革命と科学の発達によって蒸気機関や電話、自動車などが発達したこの王国で、ある時期を境に、科学では説明不可能な奇怪な事件が頻発した。
炎天下の石畳で凍結したまま、一向に溶けない女の死体。誰も登ることのできない鐘楼の、避雷針に突き刺さって死んでいた男。豪華なベッドごと、ギロチンにかけられたように切断された資産家。換金する直前、まったく同一の筆跡で10倍に書き換えられていた小切手。
何千年もの昔に魔法が存在し、魔女によって拓かれたという伝承が残る土地で起こる、不可思議な事件の数々を、いつしか人々はこう呼び始めた。
――魔法犯罪、と。
これは、奇怪な事件に立ち向かう三人の刑事の物語である。
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2022年から執筆を始めた、著者初の小説作品です。全体としては長編ですが、エピソードごとに6万〜10万文字前後で完結しているので、登場人物の時系列要素を除けば、いちおうどのエピソードからも読めるようになっています。
概要からわかる通り、本作品の主軸は「魔法」です。おそらくミステリには邪道である筈の要素を、あえて持ち込みました。作品のコンセプトは、読んでいただければわかると思います。
主人公は三人。もとメイズラント警視庁・重犯罪課の刑事アーネット・レッドフィールド巡査部長、もと国家情報局員ナタリー・イエローライト巡査、そして10歳で大学を卒業した天才魔法少年、アドニス・ブルーウィンド特別捜査官。新設された部署「魔法犯罪特別捜査課」に配属されたこの三人が、ある手段によって魔法を悪用して行われた犯罪を捜査する、という展開が基本になります。
アーネットとナタリーは大人になってから基礎的な魔法を習得しただけで、本当の意味での魔導師はアドニス、通称ブルーただ一人という設定。
主な舞台は、メイズラント王国の首都リンドン。19世紀ロンドンをイメージした架空の都市です。シャーロック・ホームズの世界に魔法が登場する、と考えればわかりやすいでしょう。イギリスの探偵ドラマのような、湿度と陰のある展開をイメージしたのですが、書いてみるとどうも、アメリカのポリスコメディに近い雰囲気になってしまいます。
もともとは昔、漫画用に切って没にしたパイロット版ネームが原作なのですが、むしろ小説の方が向いている、と気がつきました。
実は根底に、とある大好きなドラマ作品のイメージが横たわっているのですが、気付いてくれた読者さんは今のところ一人もいません。時間つぶし程度に読めるものにはなっていると思うので、お暇ならご一読いただけると嬉しいです。
作者として今いちばんお気に入りのエピソードはこちら。